delirious thoughts

by Kentaro Kuribayashi

ノーマン・マクレイ『フォン・ノイマンの生涯』

電子計算機の歴史について継続的に読んでいる流れで、去年(だっけか?)に読んだ『チューリングの大聖堂』(asin:B00C2R1C92)の続きとして読んだ。このあたりの分野は、特に何かに活かすというものでもないけど、単純に興味の赴くままに読む趣味として。経営学との関連でいうと、高橋伸夫『殻』(asin:4623066045)あたり。

Macrae, Norman. (1992). John von Neumann: The scientific genius who pioneered the modern computer, game theory, nuclear deterrence, and much more. Pantheon Books. (渡辺正・芦田みどり訳『フォン・ノイマンの生涯』朝日新聞社、1998年)

フォン・ノイマンの生涯 (朝日選書)

フォン・ノイマンの生涯 (朝日選書)

  • はじめに
  • 1 頭で世界を変えた男
  • 2 ブラペストのお坊っちゃま(1903-14年)
  • 3 ギムナジウム時代(1914-21年)
  • 4 獅子の爪をもつ学生(1921-26年)
  • 5 心のゆとりと数学者たち(BC500-AD1931年)
  • 6 ゲッチンゲンの量子力学(1926-32年)
  • 7 疾風怒濤の時代、結婚、渡米(1927-31年)
  • 8 プリンストンの憂鬱(1931-37年)
  • 9 爆発計算プロフェッショナル(1937-43年)
  • 10 ロスアラモス、トリニティ、広島、長崎(1943-45年)
  • 11 経済学に残る足跡
  • 12 フィラデルフィアのコンピュータ(1944-46年)
  • 13 プリンストンのコンピュータ(1944-46年)
  • 14 水爆への道
  • 15 絶大な影響力(1950-56年)

橋本毅彦『「ものづくり」の科学史』

『経営史講義』(asin:4130421093)からの流れで読んだ。その本では英国の産業革命のことばかり書いてて全然触れられなかったフランスからアメリカへの技術移入の話など、いろいろ勉強になった。

橋本毅彦(2013)『「ものづくり」の科学史 世界を変えた《標準革命》』講談社

  • 学術文庫版まえがき
  • プロローグ 水晶宮の鍵と銃
  • 第1章 ジェファーソンを驚かせた技術――標準化技術の起源
  • 第2章 工場長殺人事件を越えて――「アメリカ式製造方式」の誕生
  • 第3章 工廠から巣立った技術者たち――大量生産への道
  • 第4章 ネジの規格を決める――互換性から標準化へ
  • 第5章 旋盤とレンガ積みの科学――テイラー主義の出現
  • 第6章 標準化の十字軍――国家による標準化とその限界
  • 第7章 技術システムの構築と標準――20世紀の交通輸送革命
  • 第8章 標準化の経済学――デファクト・スタンダードの功罪
  • エピローグ スタンダードの行方

情報価値の高いスライドを作るために

役職が変わったりしたこともあって、取締役会のみなさんに説明したりエンジニアのみなさんに考えを伝えたりなど、社内向けにもいろんな資料を作る必要も増えてきて、そういうのが増えること自体どうかというのはともかくとして、エンジニアとしてより活動を広げていくためには、そういう文脈における資料の作り方を身に付けるというのも、ひとつのスキルアップではあります。

これまでもかなりの量のスライドを作ってきたわけですが、そのほとんどが技術イベントで話すためのもので、それはそれでいろんな工夫をしてきたつもりではあっても、コンテキストが違うと、ただ一本調子で同じようにやってもうまくはいかないわけです。上述の通り、昨年後半以降、そういうことが増えてきて限界を感じたので、あらためてものの本を読んだりして学習してみました。

コンテキストの違い

ここでいうコンテキストとは、エンジニアだけを対象にしているというよりは「経営層やマネジメントをする人々に対して主張をアピールし、説得するためには?」ということです。コンテキスト次第で「よい」資料というのは変わってくるのは当たり前のことではありますが、ともあれそうしたコンテキストにおいては、コンサルタントには資料作りにおいて一日の長があるのは明らかですから、彼らのやりかたを学んでみました。

技術イベントでのプレゼンにおいては、扱っている内容が基本的に技術の話になるので、主張の根拠を明確に示すまでもなくはっきりしており、根本的にはコードを示せればそれでOKということが多いし、スライドの中ですべてを述べきるというよりは、詳細はGitHubにコード出してるんでそこ見てねということになるわけです。

一方で、いま述べているようなコンテキストにおいては、不確実な内容について、必ずしもオープンになっていない情報にもとづき、考えられる限りの根拠を示して説得するということになるので、やり方が異なってくるのは当たり前とはいえるでしょう。また、しゃべりで伝えるというよりは、スライドのみで理解をしてもらう必要もあるため、口頭での補足なしで内容を伝える必要もあります。

スライドに必須の内容

どの本でも確実にいわれるのは、以下の内容を必ず盛り込むということです。

  • スライドのタイトル
  • スライドの主張を簡潔に表すメッセージ
  • 主張の根拠となるデータ
  • データの出典
  • ページ番号

これをテンプレート的に図示すると、以下の通りになります。

f:id:antipop:20150421233844p:plain https://docs.google.com/presentation/d/1OxCCkfeMPyjcS4g6n40YJ3yJFVkX1zYc4hPQlG-SN4M/edit#slide=id.g770b2e5f9_0_0

ここで重要になってくるのが、どういう図表を用いるのが主張を伝えるのに効果的かということになるわけですが、それをこのエントリで述べつくすことはできませんので、後述の書籍を参考にされるとよいのではないかと思います。

実際のスライドの作例

社内向けに作ったスライドをお見せするわけにもいかないので、先日作って公開したスライドを掲載しておきます。

ただまあ、これはこれで未熟なところはたくさんあります。

  • ページ番号を書いてない(まあ、じっさいにはあんまいらないかなとも思います)
  • パソコンの画面で見る分にはよくても、実際の発表の場面では字が小さ過ぎてよくなかった

また、いくらスライドにこったところで、そもそもの主張に魅力がないと意味がないし、発表のしかたによっても受け取られ方が変わるのは当然のことです。その点に関してはまた別の話題になるでしょうので、それはそれで別途研鑽を積んでいく必要があります。

参考にした本

最近、「外資系○○の〜」みたいな本がブームになっていて、たくさん刊行されています。そういうタイトルの本を、出ている分ひと通り読んだのですが、中でも参考になったものを紹介します。

外資系コンサルの資料作成術

外資系コンサルの資料作成術

この本は、上記で述べたスライドのフォーマットについてはもちろん、スライドを作っていく際の効率的なやりかた、主張したい内容をいかに効果的に図表として表現したらいいかの類型についてわかりやすく述べられていて、とても参考になりました。類書はたくさん出ていますが、概論についてはこれ1冊でいいのではないかと思います。

図表を作るに際して、上述の本で類型はわかっても、実際の作例としてどうしたらいいのかと悩むことになります。本書は、著者が実際に作ってきた資料をもとにたくさんの実例が紹介されていて、パラパラめくってながめておくだけでも、発想の源になる本です。いい例・わるい例が併記して紹介されているものも多く、とても参考になります。

まとめ

コンテキスト次第でどういうのが「よい」資料であるかは異なります。経営層などにメッセージを伝えるというコンテキストにおいては、技術イベントで話すのとは異なり、不確実であるにも関わらず納得感のある、根拠に基づいたメッセージを発することになります。また、しゃべりで補足することができない場合もあるため、スライドのみで内容を伝えきらなければなりません。

そのため、必須の内容について盛り込んだ上で、主張内容の類型によりもっとも説得的な図表を選択する必要があります。その内容については上述の通りで、そのために参考になる本も昨今たくさん刊行されているので、是非ご覧になるとよいと思います。

第1回ペパボテックカンファレンスを開催しました #pbtech

昨日4/19に、第1回ペパボテックカンファレンスを開催しました。ペパボとしては初めての試みです。

イベントについて

では、なぜそのようなイベントを開催したのか。以下のような理由です。

  • 昨今、様々なWeb企業が会社名を銘打って技術イベントを開催しているので、うちとしてもやってみたかった
  • ふだんペパボのエンジニアが仕事でやってる内容を話すだけで、コンテンツとして面白くなるという確信があった

実際に面白かったかどうかはわかりませんが、いろいろ不手際があったものの、Twitterの#pbtechハッシュタグでの感想やその後の懇親会でのお話などからうかがうに、それなりにお楽しみいただけたように思います。ご参加くださったみなさま、ありがとうございました。

当日の模様については、以下を御覧いただくとよくわかると思います。

僕が話したことについて

僕からは、全体のオーバービューを話そうというわけで、「これからのペパボの技術」というタイトルで以下のスライドにあるような話をしました。

ペパボのエンジニアが日々がんばってきた結果、こうしてテックカンファレンスを催せるようになったというのもその一例ですが、そのようにこれまでいろんな改善や組織づくりをして、ひと頃よりもさらに確かなエンジニアリングができるようになってきました。また、昨今ではそれだけにとどまらず、技術によって攻めていけるような態勢も整いつつあります。

僕としては、その役割上、どっちかというと全体観を持って方向性を決めるという感じなわけですが、なにをやるにしても単に結論だけポンッと置くようなやり方ではよくないと思っており、スライドにも述べた通り、これからのエンジニアリングの方向、市場・技術・業界の状況、組織づくりといったものが、一貫したストーリの元に行われるべきだと考えています。

そういうは考えるのも難しいし、理解を広げたり実行したりするのはもっと難しいのだけれども、だからといってやらないわけにはいかない。そういうわけで、こういう機会などをとらえて少しづつでも様々な関係者(これからペパボに入ってくれるひとも含めて)にお伝えしていく活動を続けようと思っているところです。

ところで

そんなペパボは、現在エンジニアを積極採用中です!!1こんな我々と一緒に楽しくエンジニアリングしてみませんか。是非、いますぐご応募ください。

pepabo.com www.wantedly.com

ベン・ホロウィッツ『HARD THINGS』

Facebookでスタートアップの経営者のみなさんが(苦悩とともに)絶賛してたのを見て購入。のっけから異様な緊張感の漂う記述ぶり。『プロフェッショナルマネジャー』(asin:B00H6WNO4E)の現代版を思わせるハードコアぶりで、とてもよかった。

Horowitz, Ben. (2014). The hard thing about hard things: building a business when there are no easy answers. Harper Collins. (滑川海彦・高橋信夫訳『HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか』日経BP社、2015年)

HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか

HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか

  • 日本語版序文(小澤隆生)
  • イントロダクション
  • 第1章 妻のフェリシア、パートナーのマーク・アンドリーセンと出会う
  • 第2章 生き残ってやる
  • 第3章 直感を信じる
  • 第4章 物事がうまくいかなくなるとき
  • 第5章 人、製品、利益を大切にする――この順番で
  • 第6章 事業継続に必須な要素
  • 第7章 やるべきことに全力で集中する
  • 第8章 起業家のための第一法則――困難な問題を解決する法則はない
  • 第9章 わが人生の始まりの終わり
  • 謝辞
  • 訳者あとがき

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塩沢茂『トヨタ自動車開発主査制度』

『「タレント」の時代』(asin:B00UFF0HEE) → 『トヨタの製品開発』(asin:4561520899)の流れで。

塩沢茂(1987)『トヨタ自動車開発主査制度』講談社

トヨタ自動車開発主査制度 (講談社ビジネス)

トヨタ自動車開発主査制度 (講談社ビジネス)

  • はじめに
  • 第1章 新車開発に“頂上”はない
  • 第2章 これが製品企画室だ!
  • 第3章 オーケストラのコンダクター
  • 第4章 誇れる技術があればこそ
  • 第5章 経営の安定が“名車”を生む
  • 第6章 GMに追いつき追い越せ

主査に関する10ヶ条

pp.67-69より。

  1. 主査は、常に広い智識、見識を学べ = 時には、専門外の智識、見識が極めて有効なことがある。専門といっても、要するに井戸のなかの蛙にすぎない。専門外の専門があると、別の見方で問題を見直すことができる。(雑誌を毎月何冊読んでいるか?飛行機のものなど)
  2. 主査は、自分自身の方策を持つべし = 白紙で方策なしで「頑張ってくれ、よろしく頼む」では人はついてこない。しかし、始めから出しすぎて、相手に考える余地と楽しみを与えず、固い頭で「俺のいう通りにやれ」でもいけない。少しずつ暗示を与えて、いつの間にか皆がなびいてくれる形がよい。
  3. 主査は大きく、かつよい網を張れ = 特に初期Surveyの段階でいかなる網を張るか、その方向と規模が将来の運命を決めることがある。
  4. 主査は、よい結果を得るために全智全能を傾注せよ = 5000時間級のビッグプロジェクトに、いかにして自分の総合能力を集中し、配分するか。真剣さが身体ににじみ出るようになると、人は自らついてくる。身体を張れ、初めから逃げ場を探してはならぬ。
  5. 主査は、物事を繰り返すことを面倒がってはならぬ = 自分がやっていること、考えていることが果たしてよいかどうか毎日、反省すべきである。上司に向かって自分の主張を何回も繰り返せ。協力者に、自分の意図を周知徹底させるためには、少なくとも五回は同じことを繰り返すつもりでなければならない。(寝床で復習。Carollaで700回のMeetingなど)
  6. 主査は、自分に対して自信(信念)を持つべし = ふらついてはならぬ。少なくとも顔色、態度に出してはならぬ。困ったときにも必ず妙案が出てくるものである。頑固ではいけないが……。(洗浄での司令官、R・Control A or B)*1
  7. 主査は、物事の責任を他人のせいにしてはならぬ = 体制を変えてまでも良い結果を得る責任がある。ただし、他部署に対しては命令権はない。あるのは説得力だけである。しかし、それが事実であり、逆に無限の威力を持っていると思わねばならない。他人のせいにしていいわけをいってはならない。
  8. 主査と主査付は、同一人格であらねばならない。叱りたいときは自分を叱れ。
  9. 主査は、要領よく立ちまわってはならない = “顔”を使ったり、“裏口”でこそこそやったり、“職制”によって強引に問題解決をはかったりすることは、決して長続きするものではない。必ずあとでボロが出る。(まとめることにきゅうきゅうとするな)
  10. 主査に必要な特性 (イ)智識(先生、点在)、技術力(エンジニア、組み立て、進展させる力)、経験(Levelを設定する能力)。(ロ)洞察力、判断力(可能性の)、決断力。(ハ)度量、スケールが大きいこと(経験と実績と自信より生まれる)。(ニ)感情的でないこと。冷静であること(ときには自分を殺してがまんしなければならない。怒ったら負けだからだ)。(ホ)活力、ねばり(Total Energy)。(ヘ)集中力(Pawer Timing)*2。(ト)統率力(チーム内で、相手を自分の方向になびかせることになる)。(チ)表現力、説得力(特に部外者、上司に対して。ただし、口ではなく人格)。(リ)柔軟性(特にOptionをモテ。ぎりぎりのときにはメンツにこだわらずに転身が必要なことがある。そのタイミングが問題)。(ヌ)無欲という欲(人のやったことを自分に。偉くなろうではなくて、よい仕事をしよう)。

「要するに、総合能力が必要ということです」

トヨタの技術と主査制度

p.90より。

たしかに、いかに販売力のあるトヨタであろうと、生産台数が誇れる新車の開発がおぼつかなければ、競合企業に必ずや追いぬかれてしまう。が、これまでのトヨタは、クラウン、コロナ、カローラなど世界の“名車”をつぎつぎと生み出してきた。だから今日のトヨタがあるのに、それを冷静にとらえ、評価することをせず、やれ販売力だ、財テクだ、カンバン方式だと、競合企業は別の要因を強調することでいい逃れ、トヨタを上回る新車の開発に力を注ごうとしなかった。

pp.119-120より。

「クルマは、あくまでも総合芸術であって、たとえエンジンがよくてもクルマがいいということにはなりません」

これは、トヨタ独自の車両主査制度についての認識不足をさらけ出していた。指摘どおり、たしかにクルマはそのメーカーの総合力に違いないけれど、エンジンを基本にすべての技術に波及させる強い“介在力”、それが制度として存在していたならば、話はまったく違うものにならなくてはならない。

トヨタの主査は、エンジンの軽量化によって、自分が乗りたいような新車の開発を念頭に、それをかなえてくれる技術の開発、改良をエネルギッシュに関係する部、課、さらにそれぞれの担当者にせまる。実は、これがツインカムの開発からわずか数年でトヨタの乗用車のみならず商用車までも飛躍的に進歩させた“秘密”の部分なのだ。

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*1:引用者注: 意味がわからない

*2:引用者注: ママ

リチャード・ドーキンス『進化とは何か ドーキンス博士の特別講義』

『理不尽な進化』(asin:4255008035)を読んで、ドーキンスもグールドもデネットもまともに読んだことないなと思ったので、とりあえずKindle版のあったこの本を買って読んだ。

  • まえがき
  • 第1章 宇宙で目を覚ます
  • 第2章 デザインされた物と「デザイノイド」(デザインされたように見える)物体
  • 第3章 「不可能な山」に登る
  • 第4章 紫外線の丹羽
  • 第5章 「目的」の想像
  • 第6章 真実を大事にする―吉成真由美インタビュー
  • 編・訳者あとがき

YouTubeに講義の動画があるようだ(まだ観てない)。

他のも読んでみたいと思ったけど、ほとんどKindle化されていない。まあ、もういいかなって感じでもあるけど。