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delirious thoughts

by Kentaro Kuribayashi

エドガー・H・シャイン『キャリア・アンカー』

エンジニアの職位制度について、よりよいものにしていくために見直しを考えている。そのための学習として、本書を読んだ。

そもそもキャリア・アンカーとは何か?

あなたのキャリア・アンカー(原文傍点)とは、あなたがどうしても犠牲にしたくない、またあなたのほんとうの自己を象徴する、コンピタンス(訳注: 有能さや成果を生み出す能力)や動機、価値観について、自分が認識していることが複合的に組み合わせったものです。

(p.1)

キャリア・アンカーとは、どれが自分のアンカーなのかについて、無理にでも選択を迫られた場合、どうしてもあきらめたり捨て去ったりができないひとつの(原文傍点)拠り所である、と定義されています。

(p.50)

また、キャリア・アンカーのカテゴリは以下の通り8種類があるとされている。

  • TF(Technical/Functional Competence): 専門・職能別コンピタンス
  • GM(General Managerial Competence): 全般管理コンピタンス
  • AU(Autonomy/Independence): 自立・独立
  • SE(Security/Stability): 保証・安定
  • EC(Entrepreneurial Creativity): 起業家的創造性
  • SV(Service/Dedication to a Cause): 奉仕・社会貢献
  • CH(Pure Challenge): 純粋な挑戦
  • LS(Lifestyle): 生活様式

自分がどのようなキャリア・アンカーを持っているかを知るために、40の質問が用意されているので、答えてみた。

カテゴリ TF GM AU SE EC SV CH LS
2 4 3 2 3 3 10 2
6 10 3 2 1 2 10 3
3 3 2 2 5 1 6 2
1 2 6 2 4 2 6 2
2 1 2 2 2 5 4 2
合計 14 20 16 10 14 13 36 11
平均点 2.9 4 3.2 2 2.9 2.6 7.2 2.2

CHに一方的に偏っていますね。さもありなんと思う。それぞれのカテゴリの具体的な内容については、どうぞ本書を読まれてください。

ただまあ、質問票のみだと答えが偏るので、本書にはインタビューのテンプレも用意されている。そちらの結果とも付きあわせて考えてみる方がよりよいようだ。

Schein, E. H. (1990). Career anchors: Discovering your real values. San Diego: University Associates. (金井壽宏訳『キャリア・アンカー 自分のほんとうの価値を発見しよう』白桃書房、2003年)

キャリア・アンカー―自分のほんとうの価値を発見しよう (Career Anchors and Career Survival)

キャリア・アンカー―自分のほんとうの価値を発見しよう (Career Anchors and Career Survival)

  • はしがき
  • 第1章 序
  • 第2章 キャリア指向質問票
  • 第3章 キャリア発達
  • 第4章 キャリア・アンカーという概念の展開
  • 第5章 キャリア・アンカー・インタビュー
  • 第6章 実践に生かすために
  • 原著あとがき
  • 訳者あとがき

就活生・転職希望者向けに、あの伝説の「ぶつかり稽古」が復活します

なんかまたやらかすそうです。一昨年、Web業界に伝説を作ったあの「ぶつかり稽古」を。

f:id:antipop:20150528211847p:plain connpass.com

「なにそれ?」という方は、以下の文章をご覧ください。

あの時、伝説に立ち会えなかったあなたにも、新たな伝説を目撃する機会がめぐってきました。今度こそ、見逃さないよう、刮目して御覧ください。

笠井潔・藤田直哉『文化亡国論』

サブカル文化論みたいなのを最近読んでいなかったのだけど、いまどきはどうなってるんだろうと思って読んだ。

僕より7歳年下のひとと親より年上のひとの対談なのだけど、年上の方にずっと共感したり説得させられたりしていて、歳をとって団塊の世代のひとにそう感じるようになったのかな……とか思ったりした……。なんか若いひとの方は泣き言とか愚痴をいってばかりで全然共感できないのだけど、笠井潔さんは説明ぶりも明晰だし主張が断固としていてとてもよかった。もし「運動」するなら、笠井さんの方につきたいと思う(僕のような、安倍さんの新自由主義的側面はOK(政治・文化的にはだめ)というひとがそういう感想を抱くのもアレなのかもだけど)。

笠井潔藤田直哉(2015)『文化亡国論』響文社

文化亡国論

文化亡国論

  • はじめに
  • 第1章 ネット右翼ネット左翼―情報社会と政治的感性
  • 第2章 クールジャパンとナショナリズム―右傾エンタメは危険か?
  • 第3章 もはや引きこもってはいられない―オタクから、ヤンキーへ
  • 第4章 リキッド・モダニティと空気の国民―21世紀の自我
  • 第5章 ネ申とアニミズムサブカルチャー的宗教性
  • 第6章 クレタ島の鶏は、夜明け前に騒がしく啼く―21世紀の蜂起
  • あとがき

岡村靖幸『あの娘と、遅刻と、勉強と』

岡村靖幸さんが「TV Bros.」で連載していた対談を本にしたもの。メンツも豪華だし、岡村さんの質問がかなりぶっこんでいて、いろんなひとの意外な一面を知ることができて面白かった。

岡村靖幸さんは、僕が小学校高学年〜中学生の頃が全盛期だったのだけど、当時はああいうケレン味のあるパフォーマンスを恥ずかしいと思う年頃で受付なかったが、大人になってからあれはあれでかっこいいなと思って、たまにYouTubeで延々動画を観たりしてる。かっこいい。

岡村靖幸(2015)『あの娘と、遅刻と、勉強と』東京ニュース通信社

ピラフとエンジニアリング

今晩、同僚との飲みの場で行った会話を、以下に再現する。


きたけー: 週末、炊飯器でピラフ作ったんですよ。

あんちぽ: どういうレシピで作ったの?

きたけー: まず、米をよくといで水を切った後に、溶かしたバターを絡めます。そこにコンソメの素、シーフードミックス、グリーンピースを加えて炊きました。

あんちぽ: なるほどね。美味しそうだね。

きたけー: 美味しかったです。

あんちぽ: ところで、ピラフとチャーハンの違いってなんだろう?

きたけー: (少し考えて)ピラフは材料を加えて米を炊くのに対して、チャーハンは炊いた米と材料を一緒に炒める、ということですかね。

あんちぽ: その通りだね。つまりは、材料と米のコンビネーションのしかたの違いってことだね。

きたけー: なるほど。

あんちぽ: そう考えてみると、ピラフを炊飯器で作るのは当たり前のことだよね。炊飯器は白ご飯を作るだけのものじゃない。

きたけー: そうですね。

あんちぽ: ピラフとチャーハンの例だと、炊く・炒めるという調理法による分類だけど、他にはどういうのがあるのかな。

きたけー: たとえば、味付けのしかたで分類することもできそうですね。それでいうと、会社のカレー好きのひとたちが「麻婆豆腐はカレーだ」といってたことを思い出します。

あんちぽ: スパイスの組み合わせを本質と捉えるなら、そういう認識はあり得るね。また、調理法という意味でも、どちらも煮込んだベースをスパイスで味付けして、それにうわものを足していくという意味では、共通するところがあるね。

きたけー: 確かに。

あんちぽ: では、もうちょっと敷衍して考えてみようか。ピラフの例でいえば、その本質は「炊く」ということ。それは、たとえば「炒める」という本質を持つチャーハンと比較することで立ち位置が見出される。

きたけー: 他にも「焼く」とか「煮る」とかいろいろありそうですね。

あんちぽ: さらにいえば、中華料理だと「炒める」ということにしても、炒・爆・炸・煎・燴の5種類があるように、どんどん細分化できるね(参考: 中華料理 - Wikipedia)。

きたけー: いろいろあるんですね。

あんちぽ: 細分化していくのもひとつの分類法だけど、ここではもっとシンプルに考えてみよう。細分化するのではなく、調理法をもれなく表現する上で必要最小限を考えてみる。それを示しているのが『料理の四面体 (中公文庫)』という本。著者はこういう図を描いてみせる。

f:id:antipop:20150525234505g:plain

サラダの果て、はじまりの料理/新入生のための一人飯ハック 読書猿Classic: between / beyond readersより

きたけー: 味付けという観点を捨象して、調理法に絞って考えているわけですね。なるほど。

あんちぽ: 著者の玉村豊男さんがこの考えを発表した時は、「サラダと刺し身が同じなんてけしからん!」と怒られたというけどね。

きたけー: まあ、そりゃそうですよね。

あんちぽ: しかし、プロにとってはともかく、僕らみたいに自分のために料理してる人間にとってはこれで十分なんだと思うよ。

きたけー: ちょっと納得いかないですけどね。

あんちぽ: でもこういう考え方をしていくと、数ある料理が、それぞれ別個にあるんじゃなくて、数本の軸上をグラデーションを描きつつ配置されているイメージがつくよね。料理が上手なひとってのは、こういうのをパッと認識できるひとだと思うんだよね。冷蔵庫の余り物だけでささっと献立を考えられるってのはそういうことでしょ、きっと。

きたけー: なにか料理をしようと思うたびにクックパッドでレシピを調べるんですけど、それはそれでいいけど、四面体を頭に描いて献立を考えると、バリエーションも広がるし、応用も効きますね。

あんちぽ: そのときの「バリエーション」ってのは、四面体上の点をどれだけ細かく考えられるかっていう解像度で、その精度が高いひとが「料理が上手」とも言い換えられるね。

きたけー: 解像度っていいかた、いいですね。

あんちぽ: てか、チャーハンの話してたら食べたくなったね。

きたけー: 僕もですw (店員さんに)すいませーん、チャーハンくださーい!

あんちぽ: これまではチャーハンと比較した時に見いだされるピラフの本質を考え、そこから必要最小限の調理法による料理の分類にいたったわけだけど、ところで僕らはエンジニアなので、似たような考えがエンジニアリングにも見いだされるのでは?と考えたいところだよね。たとえばどういうのがあるだろうか。

きたけー: (10秒ほど考えて)うーん、思いつきませんね。

あんちぽ: 僕らにとって身近な例をあげると、CPU・アドレッサブルな記憶装置・それらをつなぐバス・ストアドプログラムという要素から構成されるノイマン型アーキテクチャってのは、そうした抽象の一例じゃないかな。

きたけー: そうですね。ジョン・フォン・ノイマンがEDVACの実装を抽象して一般化したのがノイマンアーキテクチャで、それは現代のコンピュータの共通の基礎になってますね。

あんちぽ: それを、現に存在する実装から離れてひとつのフレームワークだと考えてみた時に、たとえばOOP関数型プログラミングの違いみたいな、定期的に話題になる問題についても整理できるかもしれないね。

きたけー: どういうことですか?

あんちぽ: ノイマンアーキテクチャフレームワークで見た場合、OOP関数型プログラミングも、アーキテクチャ内の要素の利用という意味ではほとんど同じだけど、さっきの4つの軸上における状態に対する考え方の違いと観ることもできる。

きたけー: メモリの使い方の違いということですか?

あんちぽ: 物理的な層における現象としては最終的には同じものになったとしても、その抽象のしかたが違うということ。OOPが状態を操作することで結果を算出するのに対して、関数型プログラミングは計算を積み上げることでそれを行う。

きたけー: その説明が正しいのかわからないですけどw

あんちぽ: そういう風に見ることもできるだろうということで……。

きたけー: それで、そうするとどうなるんですか?

あんちぽ: さっきの料理の例でいうと、カレーを作るのと肉じゃがを作るのとで、料理があまり上手でないひとは、それぞれに全然別個のものだと認識するかもしれないけど、「料理の四面体」のフレームで考えると、それらはどちらも「煮物」という点では同じといえるよね。

きたけー: そうなりますね。

あんちぽ: そうすると、ひとつ上のレイヤで料理について考えられるから、バリエーションを増やすことも容易になる。同じことがエンジニアリングにもいえて、プログラミングの初学者が、たとえばTwitterみたいなものを作りたいと考えて、Twitterのエンジニアに質問したとしよう。その時「Twitterは、以前はRubyを使ってたけど、いまはScalaを使っているよ」といわれたとして、「なるほど、Twitterを作るにはScalaという言語が必要なんだな!」と思ったとしたら、それは違うよね。

きたけー: そうですね。Twitterというサービスの特性上Scalaがよいという判断はあったんだろうけど、Webサービス一般を作ることと言語が何であるかとは本来的には関係ないことですね。

あんちぽ: 僕らはWebエンジニアだからそういう風にわかるけど、じゃあたとえば料理の話になったらどうかというと、それはわからないかもしれないでしょ?

きたけー: 「料理の四面体」を知って、そういう考え方もあるんだと思いました。

あんちぽ: どんな分野でもそうだと思うけど、そういう抽象化がないと、場当たり的に知識を積み上げるだけになってしまって効率がよくない。料理の例でいえば、なにか作るたびにレシピを調べるのだけど、それを応用することができない。

きたけー: 料理に関しては、僕はけっこうそんな感じですね……。

あんちぽ: 要するに、何か知識を積み上げていくというのはそれはそれでいいんだけど、時には経験を振り返ってシンプルなフレームワークにしてみて、そこから敷衍していくというのも必要なんじゃないかなと思うんだよね。

きたけー: そしてそれは、料理にもエンジニアリングにもあてはまる、と。

あんちぽ: そうそう。

きたけー: 知識を積み重ねるのも大切だけど、考え方を身につけるというのも大切ということですね。

あんちぽ: 「教養」といった時にふつうイメージされるのは、知識をいかにたくさん持っているかということだろうし、それはそれで大事だろうけど、考え方を身につけた上でそうする方が効率的だし、さらにはそれこそが「教養」といわれるべきものかもしれない。まあ、そんな大げさな言い方をしなくても、知識の積み上げと考え方のバランスが大事なんだろうね。それはこないだスライドの中で話したことだけど。

きたけー: しかし、ピラフを作ってる時にそんなことまで考えませんよw

あんちぽ: (出てきたチャーハンを食べながら)では、この石焼きビビンパ風チャーハンについて、作り方を考えてみよう。

きたけー: (もぐもぐ)美味しいですね、これ。コチュジャンが効いている……。他には……(略)


料理の四面体 (中公文庫)

料理の四面体 (中公文庫)

レム・コールハース『S,M,L,XL+』

例のレンガよりでかい本が、日本版オリジナルで編集の上で、ほぼテキストのみで文庫化されるとのことで、どんなことになるんだろうってんで興味を惹かれて購入。

ジェネリック・シティ」はいま読んでも十分に面白くて刺激的だし、「ビッグネス、または大きいことの問題」は日本の文脈だと震災後と東京オリンピックへ向けてタイムリーで、「シンガポール・ソングライン」はその先見の明に驚くし、それから20年後の今、レム・コールハースがどう考えているのかを訊いてみたい。

この文庫版については、版元に特集ページがある。

原書の読解については以下が詳しい。

また、先日レム・コールハース来日の上でトークセッションがあったようで、以下にその雰囲気を読むことができる。

レム・コールハース著、太田佳代子・渡辺佐智江訳(2015)『S,M,L,XL+ 現代都市をめぐるエッセイ』筑摩書房

S,M,L,XL+: 現代都市をめぐるエッセイ (ちくま学芸文庫)

S,M,L,XL+: 現代都市をめぐるエッセイ (ちくま学芸文庫)

  • 問題提起
    • ジェネリック・シティ
    • 都市計画に何があったのか?
    • ビッグネス、または大きいことの問題
    • まさかの林檎
    • 基準階平面
    • グローバリゼーション
    • クロノカオス
    • スマートな景観
  • ストーリー
    • 白いシート(ある夢)
    • ソビエト宮殿 ベッドタイム・ストーリー「仮想建築」
    • ミースをつくった家
    • レス・イズ・モア 1986年ミラノ・トリエンナーレの展示
    • ヨーロッパ+アメリカの前衛
    • 日本語を学ぶ
  • 都市
    • ユートピアの駅
    • 実施調査の旅 (最初で最後の……)AA調査報告
    • ベルリン―建築家のノート
    • 無を思い描く
    • 20世紀の恐ろしき美
    • アトランタ
    • 汚れを背にした白いブリーフ ニューヨークの凋落
    • 二つの新しい東京
    • ピクセル東京
    • 最前線
    • シンガポール・ソングライン ポチョムキン・メトロポリスの肖像……あるいは博士状態の30年
  • カデンツ
    • ジャンクスペース
  • 訳者あとがき(太田佳代子)

竹内洋『教養主義の没落』

刊行当初はスルーしていたのだけど、なんとなく気が向いて読んだ。

竹内洋(2003)『教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化』中央公論新社

  • 序章 教養主義が輝いたとき
  • 1章 エリート学生文化のうねり
  • 2章 50年台キャンパス文化と石原慎太郎
  • 3章 帝大文学士とノルマリアン
  • 4章 岩波書店という文化装置
  • 5章 文化戦略と覇権
  • 終章 アンティ・クライマックス