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Kentaro Kuribayashi's blog

Software Engineering, Management, Books, and Daily Journal.

深町秋生・著『果てしなき渇き』

書評 文芸

果てしなき渇き (宝島社文庫)

果てしなき渇き (宝島社文庫)

その著者の名前が気になってはいたものの(はてなダイアリユーザでもあるし「深町秋生の新人日記」)、タイミングが合わなくてなんとなく読み逃していたのだったが、『果てしなき渇き』が文庫化されているのを書店で見つけ、ちょうど本を読む流れに穴が空いてもいた折り、うまいことすっぽり読み始めることができたのだが、読み始めたら最後、ひたすら主人公および物語のハイテンションな暴走ぶりにあてられて、一気に読了してしまった。
元刑事の、いまは警備員をやっているいわくありげな中年男が、冒頭、いきなりぶち当たる殺人事件の凄惨ぶりが放つインパクトにのっけから心をつかまれるのだが、離婚した元妻からかかってきた電話により始まる、失踪した娘探しの道程は、若い女の子と白い結晶というからみの、それはそれでまぁアリなのかな的展開をみせるのかと思いきや、街のギャング、ヤクザ、県警、警察の内偵、フィクサー的実業家が入り乱れる盛り上がりぶり、そして、追跡の過程で明らかになっていく、娘の知られざる真の姿がかなりと迫真的で、先に述べた通り、巻を置くこと能わざる展開となる。
また、主人公の魅力的とは到底いい難いキャラクタ造形も、異彩を放ちまくって、読む者の心を離さない。親とあれば多かれ少なかれそうであるのかもしれないけれど、元刑事という性質に輪をかけて、ほとんど気が違っているような偏執狂ぶり(刑事を辞職した原因が、妻の浮気相手を半殺しにしたことだとか、娘の友人に対する聴取が、話をうまく訊きだそうという配慮とはまるで無縁の、悪魔じみたやりくちであること等)が、睡眠不足と加えられた暴力とで朦朧とした身体に白いものをぶちこんで元気溌剌、それまで死にそうになっていたのが一転、通りがかった小学生に対してにこやかに手を振っちゃったりするコミカルな一面も見せつつ、一段とパワーアップしてあたり構わず突入していくブッコミ野郎ぶりに、思わず熱いものがわき上がるのを禁じ得ない。
大人数が入り乱れての情報戦、凄惨な描写、絶望的な物語という点で、かつて同じように熱中した馳星周の『不夜城』を始めとする初期ノワール群を思い出すのだが、そのようなジャンルには全くもって通じていないのだから、勝手な類推はやめにしよう。それぞれに一途な思いが、一方では過剰なまでの熱さで、また一方では非情な冷酷さでもって暴走した結果、このようなひたすら熱中的な物語が産み出されたそのことに、ただただ呆然とするばかりだ。同著者による『ヒステリック・サバイバー』も、「筋肉バカvsオタク」との帯文の煽りがやや不穏な印象をもたらすものの、是非読んでみたいと思った。というか、いま、注文した。

ヒステリック・サバイバー

ヒステリック・サバイバー